【外国人採用のステップ】(4)採用後の手続き
2024.12.27外国人労働者を採用した後には、日本の法令を遵守しつつ、必要な手続きを速やかに進めることが重要です。在留資格の確認や更新、契約書の締結、社会保険への加入など、採用後の手続きが適切に行われないと、法的リスクやトラブルの原因となる可能性があります。本稿では、外国人労働者採用後に必要な主要な手続きとその進め方について解説します。
1. 在留資格の確認と手続き
在留資格の確認
雇用する外国人が適切な在留資格を持っているか確認することは、最初に行うべき手続きです。在留資格に応じて、就労可能な業務内容が異なるため、事前に以下の項目をチェックします:
- 在留カードの確認
有効期限、在留資格、資格外活動許可の有無などを確認。 - 就労制限の確認
在留資格の種類(例:特定技能、技術・人文知識・国際業務など)によって、従事可能な業務が決まっています。
在留資格認定証明書の申請
新たに外国人を雇用する場合、必要に応じて在留資格認定証明書を申請します。これは日本国外から入国する外国人が就労を開始するために必要です。申請から取得までは1~3か月程度かかるため、採用計画段階からスケジュールを考慮しましょう。
在留資格更新のサポート
在留資格の期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。企業として期限を管理し、外国人労働者がスムーズに更新手続きを進められるようサポートすることが重要です。
2. 契約書の締結
雇用契約書の作成
外国人労働者と契約を締結する際には、労働条件を明確に記載した雇用契約書を作成します。日本語が十分に理解できない場合に備え、母国語での翻訳版を用意することが望ましいです。
記載すべき主な内容
- 雇用期間:有期契約の場合、開始日と終了日を明記。
- 業務内容:具体的な業務の内容を詳細に記載。
- 勤務条件:労働時間、休憩時間、休日、時間外労働の有無など。
- 賃金条件:基本給、手当、支払い方法、支払い日を明確に記載。
- 退職条件:契約解除の手続きや条件について明記。
日本の労働法の遵守
外国人労働者も、日本人労働者と同様に労働基準法の適用を受けます。これには最低賃金、労働時間、休暇の規定が含まれます。違法な条件での契約は無効となるため、法令を遵守した契約を結ぶことが必要です。
3. 社会保険への加入手続き
社会保険の適用範囲
外国人労働者も、日本人と同様に社会保険への加入が義務付けられています。これには以下が含まれます:
- 健康保険:医療費の負担を軽減。
- 厚生年金:老後の生活保障。
- 雇用保険:失業時の給付金支給。
- 労災保険:業務中の事故や病気に対する保障。
手続きの進め方
- 資格取得届の提出
労働者が雇用保険や健康保険に加入する際、必要な書類を管轄の役所やハローワークに提出します。 - 保険証の配布
健康保険加入後、外国人労働者に保険証を渡し、利用方法を説明します。 - 脱退一時金の説明
帰国時に厚生年金の一部を受け取れる「脱退一時金制度」について説明すると、労働者の信頼感が高まります。
4. 労働条件通知書の交付
法的義務
労働基準法では、雇用主が労働条件通知書を労働者に交付することが義務付けられています。これは、労働条件を明確に示すための書類であり、外国人労働者にも例外なく適用されます。
通知書の主な内容
- 雇用形態(正社員、契約社員、パートなど)
- 勤務地
- 試用期間の有無とその条件
- 賃金や支払い方法
多言語対応の重要性
日本語が苦手な外国人労働者の場合、英語や母国語での翻訳版を併せて交付することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
5. 外国人雇用状況届出の提出
法的義務
外国人労働者を雇用する場合、雇用主は「外国人雇用状況届出」を厚生労働省に提出する必要があります。この届出は、ハローワークを通じて行われます。
届出のタイミング
- 雇用開始時
- 離職時
届出内容
- 氏名、生年月日、性別
- 在留資格と在留期間
- 雇用契約の内容
6. 労働環境の整備とフォローアップ
労働環境の整備
外国人労働者が快適に働けるよう、以下の点に配慮しましょう:
- 多言語対応のマニュアル作成
業務内容や手順書を外国人労働者が理解できる言語で提供。 - コミュニケーション支援
チーム内の言語サポートや翻訳ツールの導入を検討。
定期的なフォローアップ
- 定期的な面談を実施し、業務の進捗や悩みを共有する。
- 職場環境への適応状況を確認し、必要に応じて改善策を講じる。
まとめ
外国人労働者の採用後には、在留資格の確認、契約書の締結、社会保険の加入、労働条件通知書の交付など、多くの手続きが必要です。これらを適切に行うことで、外国人労働者が安心して働ける環境を整えると同時に、企業としての法的リスクを回避することができます。迅速かつ正確な手続きと丁寧なフォローアップを通じて、外国人労働者と企業の双方にとって良好な雇用関係を築きましょう。