HAL便り

【外国人雇用の未来】(1)外国人労働政策の最新動向

2025.01.06

近年、日本は少子高齢化による深刻な労働力不足に直面しており、その解決策の一環として外国人労働者の受け入れが拡大しています。特に、2019年の入管法改正や特定技能制度の創設は、日本における外国人労働政策の大きな転換点となりました。本稿では、最新の政策動向やその影響について詳しく解説します。


1. 入管法改正の背景とポイント

2019年4月に施行された入管法改正は、日本の労働市場において外国人労働者の受け入れを拡大する画期的な改革でした。

改正の背景

  • 日本では少子化と高齢化が進行し、生産年齢人口(15~64歳)が減少しています。
  • 特に建設、介護、農業、飲食といった労働集約型産業で人手不足が深刻化しており、外国人労働者の存在が不可欠となっています。

改正のポイント

  • 新たな在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」を創設。
  • 「特定技能1号」は、一定の技能を持ち、試験に合格した外国人が就労できる資格で、最大5年間の在留が可能。
  • 「特定技能2号」は、熟練技能を持つ外国人が対象で、在留期間の制限がなく、家族の帯同も認められる。

2. 特定技能制度の拡大

特定技能制度の特徴

  • 14分野(介護、外食業、宿泊業、農業、建設など)で適用され、人手不足が顕著な業種に特化。
  • 外国人労働者が実務に直結する技能を持つことを条件としているため、即戦力として活躍できる。

拡大の方向性

  • 特定技能制度は、対象分野の拡大や受け入れ人数の増加を検討しています。2023年には、建設業や造船業などの分野で特定技能2号の対象拡大が議論されています。
  • 技能試験や日本語試験のオンライン化や現地開催が進み、より多くの外国人が参加しやすい環境が整いつつあります。

3. 最新の政策動向

政府の受け入れ目標と現状

  • 政府は2025年までに特定技能1号で約34万人の受け入れを目指していますが、現状ではその半数程度に留まっています。
  • このギャップを埋めるため、雇用主や外国人労働者への支援策が強化されています。

円滑な受け入れのための取り組み

  • 在留資格の審査簡略化
    申請手続きのデジタル化や審査期間の短縮が進められています。
  • 生活支援の充実
    地方自治体が外国人労働者向けに相談窓口を設置し、日本での生活に必要な情報を提供。
  • 雇用主への指導強化
    適正な労働条件の提供や外国人の権利保護に向けた指導を強化。

4. 特定技能制度と技能実習制度の違い

技能実習制度の特徴

  • 技能実習制度は、発展途上国への技術移転を目的としています。
  • 技能実習生は特定技能とは異なり、学習目的が主であるため、就労期間は最大5年に限定されています。

特定技能との比較

項目 技能実習制度 特定技能制度
目的 技術移転(学習目的) 労働力確保(即戦力)
対象者 技能習得者 試験合格者
在留期間 最大5年 最大5年(1号)、無期限(2号)
家族の帯同 認められない 2号のみ認められる

5. 政策が企業に与える影響

ポジティブな影響

  • 外国人労働者の受け入れが進むことで、人手不足が緩和され、生産性向上が期待されます。
  • 特定技能制度は即戦力となる人材を確保できるため、企業の競争力強化につながります。

課題

  • 外国人労働者を受け入れる企業側が、日本語教育や生活支援を十分に行わない場合、労働者が早期退職するリスクがあります。
  • 受け入れ企業にとって、在留資格管理や労働条件の整備といった新たな負担が増加します。

6. 外国人労働政策の今後の展望

政策の方向性

  • 人口減少が続く中、外国人労働者受け入れ政策は今後さらに拡大する可能性があります。
  • 受け入れ分野のさらなる拡大や、外国人労働者が定住しやすい環境整備が進むと予想されます。

デジタル化の推進

  • 入国管理手続きのオンライン化や、在留資格更新のリモート申請が進むことで、企業と労働者双方の負担が軽減されます。

地方への分散受け入れ

  • 地方自治体での受け入れが進むことで、地域の活性化にも寄与すると考えられています。

まとめ

日本の外国人労働政策は、少子高齢化という社会課題への対策として進化を続けています。入管法改正や特定技能制度の導入により、外国人労働者が日本経済を支える重要な存在となっています。政策の変化を正しく理解し、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることは、企業や地域社会の持続可能な発展につながります。今後の政策動向を注視し、柔軟に対応できる体制を築いていきましょう。