【外国人雇用の概要】(5)外国人雇用で遵守すべき法律
2024.12.26外国人を雇用する際には、日本の法律を正しく理解し、遵守することが極めて重要です。法律を守らない場合、企業や雇用主に対して罰則が科されるだけでなく、外国人労働者の権利が侵害される可能性もあります。本稿では、外国人雇用に関連する主要な法律について解説し、それぞれのポイントや留意点を詳しく紹介します。
1. 労働基準法
概要
労働基準法は、日本国内で働くすべての労働者を対象とし、外国人労働者も例外ではありません。この法律は、労働条件の最低基準を定めており、雇用主はこれを遵守する義務があります。
主なポイント
- 労働時間と休憩
法定労働時間は1日8時間、週40時間までとされています。また、6時間を超える労働には45分以上の休憩を与える必要があります。 - 賃金の支払い
賃金は通貨で、毎月1回以上、一定の期日に支払わなければなりません。外国人労働者にも最低賃金法が適用され、地域ごとの最低賃金を下回る給与を支払うことは違法です。 - 解雇の制限
労働基準法では、正当な理由なく労働者を解雇することを禁止しています。外国人労働者であっても、日本人労働者と同等の保護を受けます。
留意点
外国人労働者の中には、日本の労働文化や法制度に詳しくない人も多いため、労働条件について事前にしっかりと説明することが重要です。
2. 出入国管理及び難民認定法(入管法)
概要
入管法は、外国人の在留資格や活動内容を規定しています。この法律に基づき、外国人労働者が日本で適法に就労するためには、適切な在留資格を取得している必要があります。
主なポイント
- 在留資格の確認
雇用主は、雇用する外国人が適切な在留資格を持ち、就労が許可されていることを確認する義務があります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など、資格によって従事可能な職種が異なります。 - 不法就労助長罪の防止
在留資格のない外国人を雇用した場合、雇用主自身が「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。この罪に問われると、罰金や懲役刑が科されるため注意が必要です。 - 雇用契約の範囲
外国人労働者が在留資格に適合しない業務に従事することも違法となります。契約内容を在留資格に即したものにすることが大切です。
留意点
在留資格の更新や変更には時間がかかる場合があるため、外国人労働者の在留期限を定期的に確認し、必要に応じて早めに手続きを行うよう支援しましょう。
3. 雇用保険法
概要
外国人労働者も、日本人と同様に雇用保険の対象となります。この制度は、労働者が失業した際に一定の給付を受けることを目的としています。
主なポイント
- 適用対象
週20時間以上働き、31日以上の雇用が見込まれる外国人労働者は、雇用保険の適用対象となります。 - 手続き
雇用主は、外国人労働者を雇用した際に、雇用保険の加入手続きを行う必要があります。また、雇用保険被保険者資格取得届を提出する義務があります。 - 離職時の対応
離職時には、資格喪失届の提出を忘れずに行い、失業給付の受給資格があるかどうかを確認するように支援しましょう。
4. 健康保険法・厚生年金保険法
概要
外国人労働者も、日本人と同様に健康保険と厚生年金保険に加入する義務があります。
主なポイント
- 社会保険の適用
正社員や一定条件を満たすパートタイマーなど、一定の雇用条件を満たす労働者は、健康保険と厚生年金保険の加入が必要です。 - 保険料の負担
保険料は、雇用主と労働者の双方で負担する仕組みになっています。
留意点
外国人労働者が帰国する際に、加入していた厚生年金の一部を受け取れる「脱退一時金制度」について説明しておくと親切です。
5. ハラスメント防止関連法
概要
外国人労働者への職場でのハラスメントを防止するため、日本では「労働施策総合推進法」や「男女雇用機会均等法」に基づき、企業にハラスメント対策を求めています。
主なポイント
- パワーハラスメントの防止
外国人労働者が言語や文化の違いから差別的な扱いを受けることを防ぐため、企業は教育や啓発活動を行うべきです。 - 相談窓口の設置
労働者が安心して相談できる窓口を設置し、迅速に問題を解決する体制を整えることが求められます。
まとめ
外国人労働者を雇用する際には、労働基準法、入管法、雇用保険法などの関連法規を正しく理解し、適切に対応することが欠かせません。これらの法律を遵守することで、外国人労働者の権利を守り、企業としての社会的責任を果たすことができます。雇用主として、法律を遵守した安心できる職場環境を提供することで、外国人労働者の能力を最大限に引き出し、共に成長する関係を築いていきましょう。