HAL便り

【成長企業と外国人雇用】(3)外国人雇用のコストとリターン

2025.01.12

外国人労働者を雇用する際には、ビザ取得費用や研修費用など、一定のコストが発生します。一方で、これらの投資に見合うリターンを得られるかどうかは、企業の運用次第です。本稿では、外国人雇用にかかる具体的なコストと、それによって得られるリターンを比較し、成長企業が外国人雇用を成功させるための戦略を解説します。


1. 外国人雇用にかかる主なコスト

1. ビザ取得関連費用

  • 内容:ビザの申請や更新にかかる費用。これには、行政書士への依頼料や手続きに伴う時間的コストも含まれます。
  • 費用目安
    • 技術・人文知識・国際業務ビザ:2~5万円程度(行政書士の手数料含む)。
    • 特定技能ビザ:試験費用や申請費用を含めて約10万円程度。

2. 日本語教育や研修費用

  • 内容:業務や日常生活に適応するための日本語教育、業務スキルの研修。
  • 費用目安
    • 日本語教育:1人当たり月1万~3万円(オンラインコースや語学学校)。
    • 業務研修:1人当たり10万~20万円(分野により異なる)。

3. 生活支援費用

  • 内容:住居の手配や家賃補助、生活ガイドの提供など。
  • 費用目安
    • 初期費用:1人当たり家賃保証や住居手配で約5万~10万円。

4. 法務・手続きコスト

  • 内容:入国管理局への届け出や、就労状況の管理にかかるコスト。
  • 費用目安
    • 外部専門家に依頼する場合、1人当たり数万円。

5. その他のコスト

  • 保険加入費用:外国人労働者も健康保険や厚生年金保険の対象。
  • 翻訳費用:契約書やマニュアルの多言語化に必要。

2. 外国人雇用によって得られるリターン

1. 労働力不足の解消

  • リターン:特に建設業や介護業、飲食業など、慢性的な人手不足に悩む業界で外国人労働者が即戦力として活躍。
  • 具体例:地方の介護施設が特定技能ビザを持つ外国人を雇用し、必要なスタッフ数を確保。これにより、利用者満足度が向上し、口コミによる利用者の増加を実現。

2. 生産性の向上

  • リターン:外国人労働者の集中力や技術力を活用し、業務効率が向上。
  • 具体例:製造業では、外国人技能実習生が学んだ技術を活かし、製品不良率が20%低下した事例があります。

3. 国際展開の促進

  • リターン:外国人労働者の母国市場や文化的知識を活用することで、企業が海外展開を成功させるケースが増加。
  • 具体例:飲食業が、外国人スタッフと協力して現地市場向けの商品を開発。初年度から予想の1.5倍の売上を達成しました。

4. 顧客満足度の向上

  • リターン:外国人観光客や多文化顧客層への対応力が向上し、顧客基盤の拡大に繋がる。
  • 具体例:ホテル業界で多言語対応のスタッフを採用し、レビュー評価が急上昇。リピーター率が前年比25%増加。

5. ブランド価値の向上

  • リターン:多文化共生を実現する企業として社会的評価が高まり、ESG投資の対象となることも。
  • 具体例:SDGsに貢献する活動の一環として外国人雇用を推進した企業が、投資家からの評価を向上させました。

3. コストとリターンの比較

項目 コスト リターン
ビザ取得 数万円 即戦力の人材確保
教育・研修 1人当たり10~20万円 業務効率化、生産性向上
生活支援 初期費用5~10万円 労働者の定着率向上、離職率低下
法務・手続き 1人当たり数万円 法的リスクの回避
翻訳や保険 数万円 職場環境の改善、トラブルの防止

総括:初期コストは発生しますが、適切な運用とサポートを行うことで、それ以上のリターンが期待できます。


4. 成長企業が採用すべき戦略

1. 長期的視点で投資する

  • 外国人労働者の定着を目指し、教育や生活支援に力を入れることで、コストに対するリターンが増加します。

2. 専門家を活用する

  • ビザ申請や法務手続きを外部専門家に委託することで、効率化と法的リスク回避が可能になります。

3. 成果を定量化する

  • 外国人雇用の成果をデータで測定(例:生産性の向上率、離職率の低下など)し、経営判断に活かします。

5. 成功事例から学ぶ

事例:IT企業のグローバル展開

  • 海外市場進出を目指したIT企業が、現地出身のエンジニアを採用。初期コストとして研修費用やリモートワーク環境の整備に投資しましたが、彼らの知識を活かした商品開発が成功し、海外売上が前年比50%増加しました。

事例:飲食業での多文化活用

  • 外国人スタッフを採用し、母国の料理を取り入れた新メニューを開発。顧客からの評価が向上し、月間売上が30%増加しました。

まとめ

外国人雇用には初期コストがかかるものの、適切な運用とサポートを行えば、労働力の確保、生産性の向上、国際展開など多くのリターンを得ることができます。成長企業として、短期的な視点ではなく、長期的な投資効果を見据えた外国人雇用を計画することが、成功への鍵となるでしょう。