【特定技能の運用方針】(8)航空
2025.02.21
航空分野における特定技能制度【2024年最新版】
少子高齢化の影響で、多くの産業現場が人手不足に悩む日本。航空分野も例外ではありません。安全運航を支える重要な産業である一方、現場では地上業務や整備業務を担う人材が不足しがちです。そこで、即戦力となる外国人材を受け入れるために設けられたのが「特定技能」制度です。
本記事では、航空分野での特定技能制度について、どのように受け入れが行われるのか、必要な試験や資格、そして企業や外国人に求められる条件などをわかりやすく解説します。
航空分野の特定技能制度とは?
● 特定技能制度の概要
特定技能制度は、特定の産業分野で人材不足が深刻化している日本において、専門的な技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格制度です。航空分野では、主に「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2つの業務区分を対象とし、即戦力となる外国人が活躍できる仕組みを整えています。
● 1号・2号の違い
特定技能1号
相当程度の知識や経験を必要とする技能を要し、在留期間は通算5年まで。家族帯同は原則認められません。
特定技能2号
より熟練した技能を要し、在留期間の更新に上限がなく、家族帯同が可能となる場合があります。ただし、2号へ移行するには、試験合格に加え実務経験など厳格な要件を満たす必要があります。
なぜ航空分野に外国人材が必要なのか?
● 人手不足と安全運航の両立
航空分野では、コロナ禍からの回復や観光需要の拡大に伴い、空港での地上業務(グランドハンドリング)や機体整備の作業量が増加しています。その一方で、国内では少子高齢化の影響もあり、人材の確保が難しくなっています。
安全運航を支えるためには、地上業務や整備業務で専門知識や経験を持つ人が不可欠。そこで、特定技能制度を活用して即戦力となる外国人材の受け入れを図っているのです。
航空分野で特定技能外国人が従事できる業務
● 空港グランドハンドリング
- 対象となる業務例
- 航空機の誘導やけん引の補助
- 手荷物や貨物の仕分け、搭降載
- 航空機内外の清掃整備
- 乗客の受け入れサポート など
- 特定技能1号
チームリーダーや指導者の下で、地上走行支援や手荷物・貨物取扱などに従事。 - 特定技能2号
現場の技能者を指導したり工程管理を行うなど、より高い熟練度が求められます。
● 航空機整備
- 対象となる業務例
- 機体や装備品、エンジンの点検・整備
- ドック整備、部品検査 など
- 特定技能1号
整備士の監督の下、機体や装備品などの整備に従事。 - 特定技能2号
自らの判断で、より専門的・技術的な整備作業を行い、新人への指導も行います。
受け入れに必要な技能・日本語レベル
● 特定技能1号の要件
- 技能試験
- 「航空分野特定技能1号評価試験(空港グランドハンドリング)」または「航空分野特定技能1号評価試験(航空機整備)」に合格すること。
- もしくは、関連する技能実習2号を良好に修了している場合は試験が免除されるケースもあります。
- 日本語能力試験
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格。
- ただし、いずれの職種・作業でも技能実習2号を良好に修了している場合は、日本語試験が免除になります。
● 特定技能2号の要件
- より高度な技能試験に合格すること
例)「航空分野特定技能2号評価試験(空港グランドハンドリング)」「航空分野特定技能2号評価試験(航空機整備)」「航空従事者技能証明(整備士資格など)」 - 実務経験
- グランドハンドリングの場合:現場で他の技能者を指導できるレベルの経験
- 航空機整備の場合:3年以上の専門的・技術的な作業経験
受け入れ企業(特定技能所属機関)に求められる条件
航空分野で外国人を受け入れる企業には、以下のような条件があります。
- 空港グランドハンドリング業務の場合
- 空港管理規則に基づき、空港管理者から営業を認められていること。
- または航空法第100条第1項の許可を受けていること。
- 航空機整備業務の場合
- 航空法第20条第1項の認定を受けている整備事業者、もしくはその委託先。
- 航空分野特定技能協議会への加入
- 在留諸申請の前、あるいは一定期間内に協議会の構成員となる必要があります。
- 国土交通省が行う調査や指導に協力し、協議会の活動にも参加することが義務付けられています。
- 直接雇用(派遣は禁止)
- 特定技能外国人を派遣社員として受け入れることは認められていません。
- 派遣で働く形態は法律上、許可されない点に注意が必要です。
- 実務経験証明書の交付
- 特定技能外国人から依頼があった場合、企業は実務経験を証明する書面を交付しなければなりません。
特定技能1号外国人支援計画(支援体制)について
● 支援計画が必要
- 特定技能1号で受け入れる場合、企業は支援計画を作成し、外国人が日本で安定して働けるよう多方面のサポートを行わなければなりません。
- 日本語学習や生活サポート、相談窓口の案内など、多文化共生を意識した取り組みが求められます。
● 登録支援機関を利用する場合
- 企業自ら支援を行わず、登録支援機関に委託する場合は、その登録支援機関も航空分野特定技能協議会の構成員である必要があります。
- 適切な支援を行わないと、特定技能の在留許可が得られない場合があります。
申請時の必要書類・確認事項
● 主な書類
- 試験合格証明書の写し
- 航空分野特定技能評価試験(空港グランドハンドリング/航空機整備)
- 航空従事者技能証明(整備士資格)など
- 日本語能力試験合格証明書の写し
- 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上
- 技能実習2号修了証明書の写し(必要に応じて)
- 航空分野特定技能協議会の構成員証明書(企業・登録支援機関)
- 航空分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
- 国土交通省が定める様式を使用
- 実務経験証明書(2号へ移行の場合など)
注意点・よくある質問
Q1. 派遣形態で外国人を受け入れたいのですが可能ですか?
A. 航空分野では派遣契約は認められません。必ず特定技能外国人と受け入れ企業が直接雇用契約を結ぶ必要があります。
Q2. 日本語能力の要件を満たさないと働けないのですか?
A. 原則、所定の試験(N4相当以上など)に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を良好に修了している場合は日本語試験が免除されるケースがあります。
Q3. 特定技能2号に移行すると、家族帯同は可能ですか?
A. 特定技能2号は、在留期間の上限がなく、条件を満たせば配偶者や子どもの帯同が可能です。ただし、移行には高い技能レベルや実務経験が必要となります。
Q4. 航空分野特定技能協議会への加入は必須ですか?
A. はい、在留諸申請の前、あるいは一定期間内に必ず加入し、その後も協議会の活動に協力しなければなりません。加入していない、または協力を怠った場合、受け入れが認められません。
まとめ
航空分野での特定技能制度は、地上業務から整備業務に至るまで、専門性の高い仕事を担う外国人材を受け入れるための大切な仕組みです。安全第一が求められる航空業界だからこそ、技能試験や日本語能力、実務経験などの要件が厳格に定められています。
一方で、受け入れ企業側にも航空分野特定技能協議会への加入や適切な支援計画の作成など、多くの責任が課せられています。こうした体制を整えることで、外国人材が安心して働き、企業も高品質なサービスを提供できる環境づくりが期待されています。
最後に
航空分野の特定技能制度に関する情報は、国土交通省や出入国在留管理庁の公式サイトで随時更新されています。実際に受け入れを検討する企業や、働きたいと考えている外国人の方は、最新情報をこまめにチェックしましょう。
ポイント
直接雇用契約が必須
協議会への加入・協力が義務
安全管理規程や航空法など関連法令の遵守
実務経験の証明書発行義務
安全で円滑な航空業務を維持するために、企業と外国人材が協力してより良い職場環境をつくり、さらなる空の発展に貢献していきましょう!