【特定技能の運用方針】(9)宿泊
2025.03.14はじめに
国際行政書士として海外からの人材受け入れを数多く手掛ける中で、特定技能ビザへの注目がここ数年で格段に高まったと実感しています。特に宿泊分野は、新型コロナウイルスの影響から徐々に回復し、観光需要が再び拡大するなかで、外国人材の積極採用が可能となる貴重なタイミングを迎えています。
しかし、実際にビザ申請や現場の受け入れに着手してみると、各種書類の準備や支援計画の策定に想像以上の時間と手間がかかります。書類不備や要件の見落としで不許可になるケースも散見されるため、企業側には正確な知識と周到な準備が欠かせません。本記事では、国際行政書士の立場から、特定技能(宿泊分野)申請におけるポイントと注意すべき点をわかりやすくまとめました。
特定技能(宿泊分野)の概要
特定技能ビザは、人手不足が深刻な業種で即戦力として働ける外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。宿泊分野では、フロント業務や接客、レストランサービスといった宿泊サービスの根幹を担う業務を担当できます。
特定技能1号は通算5年まで在留できる一方で、長期雇用や更なるキャリアアップを目指す場合には特定技能2号への移行も視野に入ります。宿泊分野で2号へ移行可能となる見通しもあり、優秀な人材を長期的に確保したい企業の間では、今後ますます注目されるでしょう。
ビザ申請のポイントを押さえる
宿泊分野の特定技能ビザ申請で押さえておくべき要点は多岐にわたります。国際行政書士として特に強調したいのは以下の7点です。
✅試験合格または技能実習修了
外国人本人が「宿泊分野特定技能評価試験」と日本語試験に合格しているか、宿泊分野の技能実習を修了していることが基本条件です。いずれも証明書や合格通知をしっかり取得し、コピーを忘れず提出しましょう。
✅旅館業法の許可確認
受け入れ先企業は、正規の旅館業法許可を得た宿泊施設を運営している必要があります。風俗営業に該当する施設や、無許可の簡易宿所などは対象外となるため注意が必要です。
✅支援計画の策定
特定技能1号では、企業側が「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、入国時の空港出迎えや住居確保、生活オリエンテーションなどを実施する義務があります。計画書の内容が不十分だと審査にマイナスとなります。
✅待遇は日本人と同等以上
賃金や福利厚生は、日本人社員と同等水準以上でなければなりません。低い給与や社保未加入などがあれば、在留資格認定証明書は交付されません。
✅協議会への加入
宿泊分野で外国人を初めて受け入れる場合は、国土交通省が設ける特定技能協議会に加入する必要があります。加入が確認できないとビザ申請が認められないケースもあるため、早めの手続きをおすすめします。
✅多言語対応マニュアル
接客や安全衛生に関する手順書を、できれば英語ややさしい日本語に翻訳しておくと、現場の混乱を減らせます。特にフロント周りの業務は、お客様への説明も多く、多言語化が離職防止や顧客満足度向上に繋がります。
✅書類チェックの徹底
特定技能ビザ申請は提出書類が膨大で、不備があると差し戻しや追加資料の請求を受けます。雇用契約書、試験合格証、支援計画書、決算資料など、不足がないかダブルチェックしましょう。
文化的配慮と現場の準備
宿泊分野は接客要素が強く、文化や慣習の違いが顕在化しやすい現場です。例えば、日本式の「おもてなし」や独特の敬語表現は、外国籍のスタッフにとっては大きなハードルとなる場合があります。
そこで企業側は、配属前の研修で具体的な接客ロールプレイを実施したり、業務マニュアルにピクトグラムを使うなど、言語の壁を越えた工夫をすると効果的です。現場でのフォローアップと定期面談も欠かせません。早期離職を防ぐためにも、働きやすい職場環境づくりが重要です。
ビザ取得後のサポート
無事にビザが下りた後も、企業には四半期ごとの報告義務や在留期間の更新申請など、継続的な手続きがあります。特定技能1号は最長1年ごとの更新が基本で、更新時にも支援計画の実施状況や賃金の適正性がチェックされます。
また、特定技能2号への移行を目指す外国人に対しては、追加の試験情報や研修機会を提供するといったサポートが必要になるでしょう。こうした対応を丁寧に行う企業ほど、外国人材が長期にわたって力を発揮しやすくなります。
まとめ
特定技能(宿泊分野)は、観光需要が再拡大する日本の宿泊業界にとって、非常に有力な選択肢です。とはいえ、申請までの道のりは決して平坦ではなく、企業には制度理解ときめ細かな準備が求められます。
国際行政書士としては、ビザ取得だけでなく、外国人材と企業が互いに成長できる環境づくりを支援することが不可欠だと感じています。文化的ギャップや言語の問題、法令遵守の難しさを乗り越えるためには、早期相談と専門家のサポートが大きな助けになるでしょう。
最新の法改正情報や行政通知にも注意を払いながら、特定技能制度を活用して優秀な人材を迎え、宿泊業界のさらなる発展を目指してみてはいかがでしょうか。